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縄文ニワトリ コラム vol.11



*顔  *jomon_niwatori



僕は今、僕の隣に寝ている可愛い彼女に見とれているの。
こんなに可愛いんだもの...
きっと僕以外の奴だって彼女を好きになってしまうに違いない!!



僕はこう見えても結構なヤキモチ焼きなんだ。



...そうだ!

寝ている彼女の顔に、チョビ髭を描いてしまおうかな?

そしたらきっと、誰も彼女に惚れたりしないだろう...

それとも彼女のホッペタに、僕の名前を書いておこうかなぁ?

だって彼女は僕のものだもの...

...ううん...

そんなことしたら僕、君に嫌われてしまうよね...



ねぇ、どうしたらずっと僕の側にいてくれる?


君に飽きられたりしないように、僕はどうしたらいいのかな?
実を言うと僕、君の前では目一杯格好つけているの。

僕ね...そんなに大した生き物ではないんだ。



ねぇ、君には僕の顔がどんな風に見える?
...情けない?不細工?...それとも、ちょっとは好きでいてくれる?


僕の方は、君の顔が情けない時も、不細工な時も、気難しいときも...

とてもとても、可愛くて可愛くてしょうがないんだ!!


そんなこと、君は全然知らずに、

クークークー

グーグーグー

あぁ!

よく眠る姫だこと!!




縄文ニワトリ コラム vol.12



*僕のおじさん  *jomon_niwatori



僕のおじさんは歯医者に行かない。


「虫歯なんて治すもんじゃない。

虫に食われたら食われたで、それまでよ。ハハハ...」



そう言って笑うおじさんの口には、左半分の上の歯がない。

そして不思議なのは...

おじさんの右半分の歯は、全くもって健在で1本も虫歯がないんだ。



おじさんは左側の歯でばかり物を食べていたのかな?

それとも、左利きのおじさんは、右側の歯の方が上手に歯磨き出来るのかもしれないね?

 

おじさんは僕と同じでとっても不器用なんだ。

ただそれだけ。

右も左も前も後ろも...なんで僕達、こんなにも上手にバランス がとれないんだろうね?


おじさん、世の中のみんながおじさんのことを嫌いになっても、
僕だけはきっと、おじさんのこと嫌いになったりしないからね。




縄文ニワトリ コラム vol.13



*僕のおじさん:その2  *jomon_niwatori



今日も僕のおじさんの話をしてもいい?
僕のおじさんね、歳の割にはお腹も出ていないし、禿げてもいない、

結構いい顔しているんだよ。

ただ笑うと歯がないだけなんだ。



おじさんは彫刻家。

大体いつもおじさんはアトリエに居る。

ひょっこり遊びに行くと、毎回、大きなアルコールランプのような機械(?)で涌かした、

全然甘くないココアを入れてくれる。

いつも口の中をやけどするくらいに熱くて、

僕は飲むのにとても苦労する。



ある日、おじさんはココアを入れてくれなかった。



「僕、手を出してごらん」



おじさんは、小さな木の実を3つぶくれた。



「元気の出る木の実。食べられるよ、煎ってあるから。」

そう言っておじさんは、口を閉じたまま笑った。



「お前が俺の所にくる時は、決まって泣きそうな顔をしているんだから。

いいか、良く聞けよ?この木の実には、赤色とオレンジ色が染み込ませてある。

どうしようもなく悲しくなった時には、これを食べろ。

心に色が広がって、温かく染まっていくから。」



僕はまだこの木の実を食べられないで持っている。

本当に、死んでしまう程悲しくなった時の為にとってあるんだ。

おじさん、おじさんがくれた木の実、3粒しかないと思うと、

死んでしまう程悲しいことなんて、そうそうないみたい。



おじさんはもう、アトリエにいないけど...



おじさん、僕は、今日も強く生きているよ。




縄文ニワトリ コラム vol.14



*ぼくんち  *jomon_niwatori



ある日、僕が住んでいる繭がコロコロと転がり出した。
どこに行くんだろう!?目が回る...



そうして繭は、丸一日転がり続けてようやく止まった。



窓の外に目をやると、見なれない建物ばかり。

味気ない色したビルがニョキニョキと生えている。

ついこの間まで...この窓からは海が見えたはず。

...僕は、どこに辿り着いたんだろう?



部屋の広さも変わっちゃった。

転がり続けた外圧のせいだろうか?

一回り狭くなっていた。

おかげで僕は、一回り分の荷物を捨てなくちゃいけなくなった。



何を捨てよう...

役に立たないもの?

じゃぁ、役に立たないけれど大好きな、ホーリー・ワーバートンの画集はどうしよう...

古くなったもの?

この象印の炊飯ジャーは70年代の代物だけれど、まだまだおいしい御飯が炊けるし、

何よりこの緑色のラインが愛しいもの...



昔の彼女との写真...これは微妙だ。

役にも立たないし、今となってはもっと愛すべき彼女がいるし...

でも...僕はチキン野郎だから、1枚だけ机の奥にしまっておこうかな?

どの1枚にしようかなぁ...?

これは...初めて撮った写真だね。僕も君も、今よりだいぶん若い。

これは...君があまりに不細工に写り過ぎていて、なんだか可愛いし。

これは...あのころの僕の愛車だ。いつもとなりに君がいたね。

ああ!1枚だなんて選べないよ!!



ねぇ、何を捨てよう?



僕の部屋、余計散らばって、散らかって、こんがらがっちゃって。



排気ガスが目にしみる今日、僕は、果てしなく途方にくれています。




縄文ニワトリ コラム vol.15



*夏バテの種  *jomon_niwatori



「東京の夏は暑すぎる!!
年々ひどくなってきていない?この暑さ!

暑いってば!暑いってば!もう嫌!!」



ニワトリ仲間がバタバタ怒りながらぼくんちにやってきた。



「あー暑い!水ちょうだい!水!」



僕は水色のグラスに氷と水を入れて、彼女に渡した。



僕はてっきり、彼女はそれを飲み干すのかと思ったのだけれど・・・

なんと彼女は、ぼくんちの床にグラスの水をまき散らした。



彼女は昔から滅茶苦茶で、いつだって何の説明もなく驚くようなことを突然にやってのける。

でも彼女には彼女なりの、他人にはわからない理由がいつもきちんとその胸にある。

「どうしたの?」って聞かないと彼女はいつも理由なんて言わないから、うん、

ちょっと誤解を生みやすいタイプだ・・・



僕はいつものように聞いた。



「どうしたの?」



「この間あんたんちの床に夏バテの種を植えておいたのに、ちっとも芽が出ていないから」



「え?また勝手にぼくんちに夏バテの種を植えて・・・事前にひとこと言ってよ。」



「事前にひとこと言ったら『ダメ』って言うでしょう?」



「そりゃそうだけど」



「あんたが思ってる以上にいい花が咲くのよ、夏バテの花。」



「・・・花火みたいなの?」



「ううん、違う。魚。」



「魚?」



「魚が2匹、伸びた枝の先にぶら下がるんだって!」



「何言ってるの?釣り?」


「いいから、ほらみて、芽が出てきた!」



彼女が指差す方を見ると、本当だ、ぼくんちの床から芽が生えてきた。


彼女とボーっとみること5分・・・
その芽は50cm程の高さになり、ポンッという音と共に本当に魚が咲いた。



咲いた魚は枝先を離れて、スイスイと僕の部屋を自由に飛びまわった。

僕はまるで水の中にいるような涼しい気分になった。



ところが、だんだんと魚の動きが鈍くなり、とうとうその体は固まって、床にごろりと転がってしまった。


「あーあ、枯れちゃった・・・」



彼女はハスキーな声でとても残念がった。



「これはね、夏バテ解消を目的に品種改良を重ねて作られたものなのよ?
あんたんちがあまりに暑いから、夏バテを解消する為の花ですら、夏バテになってしまうのよ。

終わってるわよ、あんたんち。高かったのに!!

だいたいあんたって計画性がないのよ。協調性もないわよね。ようするに勝手な人間なのよ。」



そうして彼女は、バタバタ怒りながらぼくんちから帰っていった。

彼女はいつだって嵐のようだ・・・



・・・やっぱり僕って勝手な人間なのかなぁ・・・?

ロウソクのような魚2匹と、ぼくんちに根を張った50cm程の木を見ながら・・・

僕は僕自身を振り返り、数々の身勝手な行動を振り返り、人様にかけた迷惑を振り返り・・・

暑すぎる部屋の中、僕は一人で寒くなってしまったの。




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