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縄文ニワトリ コラム vol.16
*花火と焼きそばと君と僕
*jomon_niwatori
僕は、屋台の焼きそばが好き。
輪ゴムみたいにモシャモシャしてて水気がなくて、
具がキャベツしかない、なんともシンプルな、あれ。
あれって、家で真似て作ってみても、ち〜っともおいしくないのは何故だろう?
何度作ってみてもおいしくないので、僕は真面目に考えた。
きっと僕は、このくちばしで焼きそばをつついているだけじゃなくて、
空気や景色もモシャモシャ一緒に食べているんだよ。
僕、この間「奥多摩」に行ったの。
奥多摩って東京都なんだけど、そんなの信じられないくらい空気
がおいしくって。
おいしいを通り越して、甘かった。
たくさん空気を吸い込んだら、僕の体の中にさわやかな森が1つできた気がした。
「誰かさん。今僕を食べたら、きっと、さわやかで甘くて、とってもおいしいよ!」
って思った。
...僕はいつだって死んでしまう覚悟ができているから。どうぞ、御自由に。
ニワトリとしての自覚は結構ちゃんとあるんだ。
忘れてはいないよ、そう、僕はニワトリ。
明日の保証なんてなんにもないんだ...
...そんな事を思っていたら、さわやかな森も樹海のようになってしまうから。
僕は僕の内側に気をとめることを途中でやめた。
ふと見上げると空の中心に、大きな紫色の花火とピンク色の花火が、
まあるく仲良く広がっていた。
僕はあの花火まで飛んでいって、ピンクと紫の間を行ったりきたりしたかった。
そして僕の白色を派手な色彩に染めてしまいたかった。
でも僕はニワトリだから飛べない。
僕はしばし空を見上げたまま、目蓋の裏に花火の残像を焼きつけた。
目を閉じれば蘇るフィルムを、僕はいくつ持っているのだろう?
そして、僕のメモリは、あとどれくらい?
「焼きそば、買ってきたよ。まずそうだけど。」と彼女。
「ありがとう」と僕。
...うまい。モシャモシャ。具無し...
僕があとどれくらい僕自身でいられるかなんて、大した問題じゃない...のかなぁ??
...うまい。モシャモシャ。キャベツ一切れ...
...僕が僕でなくなっても...君だけは...本当に僕を愛し続けてくれる...のかなぁ??
縄文ニワトリ コラム vol.17
*海猫門番
*jomon_niwatori
ジリリリリ!ジリリリリ!
こんな夜更けに、僕の家の黒電話が鳴いてる。
「...はい、縄文ニワトリですが、どちら様でしょうか?」
「俺だよ俺、平成ニワトリだよ。大変なんだよ!」
「平成かぁ...どうしたんだよこんな夜中に...ムニャ...」
「どうしたもこうしたもないよ。
俺たちの...俺たちの植えた記念樹が根元から切り倒されてるんだよ!!」
「な!なんだって!!」
僕はコートを羽織り、記念樹を植えた「海の森」へと急いだ。
「海の森」はセキュリティが厳しく、
海猫門番とジャンケンをして勝たないと入ることができない。
負けてしまうと「心が汚い者は入れません」というハンコ を額に押され、
海猫門番の鋭いくちばしで突かれまくって追い返されてしまうんだ。
しかも洗っても洗っても2〜3日はそのハンコは落ちない。
負けてしまうと本当に散々なんだ。
「海の森」の門に着いた。
今日も海猫門番が腕を組んで立っている。
(最近の僕は心が汚いかなぁ?たぶん...たぶん平気だと思うけど...う〜ん...??)
「あの...すみません。海の森に入りたいんですけど」
「どうぞご自由に。門の上を飛んで入ってくださいな。」
「あの...申し訳ないけど、僕、ニワトリだから飛べないんだ...」
「そんなことは知っているよ。君は俺とは違うからね。」
海猫門番はにやりと笑った。彼はいつも僕に一言イヤミをいう。ちょっと嫌なやつだ。
「ジャンケン、ポイ!」
海猫門番はパー。僕はグー。
...負けてしまった。
「おでこを出して、ハンコを押すから。」
「い、いやだよ。僕、記念樹を見たいんだ。
僕らの記念樹がどうやら切り倒されてしまったらしいんだよ。
お願いだよ、中に入れて!!」
「駄目駄目。今日の君は入れないよ。
俺のジャンケン診断はどこの医者よりも正しいんだ。
君の心に今、「海猫門番は嫌なやつだ」って書いてあったようだね。
人を嫌うなんて。あー!君はなんて心が汚いんだろう!!
海の森が汚れるから、君みたいな奴はここから先は通せない。
あー!嫌われた俺は、大変に傷ついた!!
うわ〜ん!みゃー!うわ〜ん!みゃ〜!」
海猫門番は、海猫特有のへんてこりんな鳴き声で大泣きし始めた。
「わ、悪かったよ...海猫門番。
確かに僕は、僕の羽程に真っ白な心を持っちゃいないよ。
でも、君の全てを心から嫌っている訳じゃないんだ。
だって...きっと君が死んでしまったら僕は少しだけ悲しいから。
君がいない「誰でも入れる海の森」の門なんて、ずいぶんと味気ないものだろうよ...」
「そうか。」
海猫門番はピタリと泣き止んで僕の目をまっすぐに見た。
そしてニヤリと笑ってこう言った。
「記念樹は、俺が切り倒したんだよ。
それでも、俺が死んだら泣いてくれる...?
正しいのは「事を憎んで人を憎まず」だよ?」
「...... 。」
僕の心を真っ白にするには、
僕は...僕は...いったいどうしたらいいのだろうね?
僕は今夜、おでこにデカデカと失格のハンコを押されてしまったの。
縄文ニワトリ コラム vol.18
*赤い糸
*jomon_niwatori
「ねぇ、縄文ニワトリィ...小指貸して??」
彼女が甘い声で僕にそういった。
「何するの?」
と僕が聞くと、彼女は、
「赤い糸をたどってみるの。」
「見えるの?」
と僕が聞くと、彼女は微笑んで、
「えぇ。だって私は女だもの」
彼女は、僕の小指から出ているらしい赤い糸をたぐり寄せ始めた。
「ちょっと...ちょっとやめてよ!」
僕は思わず怒鳴ってしまった。
「...なんで??」
泣きそうな彼女。
(だって...赤い糸の先が君だったらいいけど...
もしも、もしも僕の糸の先が君と繋がっていなかったら...君はどうするの?
僕が君にふさわしくないことを知ってしまえば...
きっと君は、この先の僕との残り時間まで放棄してしまうんでしょう?
僕は少しでも長く君といたいんだよ...
ねぇ、赤い糸の先が自然と見えてくるまで、放っておこうよ...)
そう思ったけど言えなかった。
代わりに口から出た言葉は、
「僕、未来なんてどうでもいいんだ...興味ないよ。」
彼女はうつむいたまま静かにこういった。
「...ずっと私と一緒にいたいなぁ...なんて思ってはくれないんだね...」
(違うんだよ...違うんだけど...)
上手い言葉が見つからない。
アワワ...アワワ...
空気がこんなにも重たい!!
...ごめんね、姫。
僕が臆病者なばっかりに...
さらに口べたなニワトリで...
ウウウ...ウウウ...
僕、君と一緒にいたいんだけどなぁ!!
縄文ニワトリ コラム vol.19
記念日:その2
*jomon_niwatori
12月3日...
今年もまた大事な記念日がやってきた。
遠く離れた君へのプレゼントは、僕が作った「悲しみ吸い取り紙」だ。
喜んでくれるだろうか?
とっても悲しくてどうしようもない時に、これをおでこに貼ると、
「おまえは悲しい思いなんて、これっぽっちもしなくっていいんだから...」
って、直接脳に語りかけてきて、悲しみを吸い取るんだ。
郵便で贈るよ。
大切な君は、どうぞ悲しい思いなどせずに過ごしていてね...
縄文ニワトリより
縄文ニワトリ コラム vol.20
*潔癖症
*jomon_niwatori
僕の部屋は汚い。
昨夜飲んだワインの瓶が転がっていたり、
雑誌が散らばっていたり。
だって、外側の事はどうでも良いんだもん。
そんなことより、僕の内側。
僕は、いつだって新品のハートでいたいって思うのに...
ハートを取り出して、ゴシゴシこすってみた。
ハァーッって息を当てて、ゴシゴシゴシゴシ...
洗っても洗っても透明にならない...
少しきれいになったかな?と思ったとたんに、またすぐシミが浮き出てくるんだ。
...僕はもう、ハートを磨き疲れてしまったの...
僕は磨く事をあきらめて、そのままハートをだっこして眠った。
ハートと添い寝しているうちに、ハートが僕に語りかけてきた。
ハートは、僕が生まれた時から、いや、生まれる前から、僕とずっと一緒にいたそうだ。
「私はいまさら新品なんかにはなれない。
だけどね、よく聞いて。私は物知りになったのよ。
どうか嘆かないで前を向いてちょうだい。
悲しんでいる人がいたら、
私の悲しみの引き出しから優しい毛布を取り出して、その人を包むの。
怒っている人がいたら、
私の怒りの引き出しから、かわいくて甘いキャンディーを取り出して、
その人に差し出すの。
私は新品じゃないからこそ、痛んだ人の看病が少しはできるようになってきたのよ。
だから、私を磨かないで放っておいて。私を丸ごと、あなたの胸の中に置いていて。」
そういってハートは僕の口から僕の内側に戻っていった。
僕はハートに伝わらないように、とても静かに、こっそりと泣いた。
僕のハート、あまりにも厳しく磨いちゃって...ごめんね。
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