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縄文ニワトリ コラム vol.27



*ミルキーウェイ *jomon_niwatori



僕、この世に生まれる前のことを、よく覚えているの。



ミルキーウェイに仰向けに浮かんでさ、

これから僕の人生が始まることを

とても楽しみにしていたんだ。



「きっと素晴らしい人生にするんだ!!

あー、ワクワクするなぁ!!」



金色のミルキーウェイをプカプカ漂いながら、

僕は、僕が地球に生まれゆく時を、今か今かと待っていた。



ところで君は、ミルキーウェイの星たちの間に、

たくさんの文字が埋もれていたことを覚えているかい?



文字を拾い集めて、パズルのように組み合わせると、

これから始まる人生に必要なメッセージが表れるっていうアレのことだよ。



僕、生まれる前、あのパズルで無邪気によく遊んでた。



「夢」とか「希望」とか「平和」とか...

あったかい言葉達が表れると、

早く生まれたい〜!って、

僕のワクワクはさらに大きくなった。

胸がドキドキして、爆発するかと思ったくらい!!



悲しい言葉は、ミルキーウェイには無かったから...

あの頃僕は、胸がドキドキするのは、

嬉しい時だけだと思っていたよ。



僕が一番大事にしているミルキーウェイの言葉は、

今でもこの胸の中で、あたたかく、ひときわ良く輝いている。



今夜、大好きな君に

その言葉を贈ろうと思うんだ。



受け取ってくれるかな?



君みたいに綺麗で、透明だけれど、カラフルな言葉。



君だけに贈ることができる、秘密の言葉なの。




縄文ニワトリ コラム vol.26



*ハチマキ先生からの暑中お見舞い *jomon_niwatori



ガミガミ電話が鳴りだした。



プルプルプルプル!!ガミガミガミガミ!!

プルプルプルプル!!ガミガミガミガミ!!



僕はずーっとガミガミ電話を無視し続けていたけれど。



ガミガミ電話が28回も鳴くもんだから、

僕はそのうるささにたまりかねて、思わず受話器を取ってしまった。



「はい、縄文ですが何か!!」



「縄文さーん、やっと出てくれましたね。

曲できましたか?締め切り過ぎてますが。」



「いや、もう、なんていうか、ここらで、湖か海に行ってきます。」



「縄文さん!? 何をおっしゃいますか。

キノコ山レコーズから連日催促されていて、私も困っているのですよ。

とにかく仕上げてもらわない事には、一歩も外に出すわけには行きませんよ。」



「いや、もう、なんて言われようと、ここらで湖か海に行ってきます。

仮に僕が縄文式のロボットだったとしても、この状態じゃぁ、いい加減バグ起こしますよ。

僕、今、自分の事『噴火直前の火山みたいだ』って思いますもの。」



「...火山ですか。わかりました。じゃぁ1日だけですよ、縄文さん。

今夜11時までに戻るのであれば許可します。

私だっていいかげん、キノコ山レコーズに頭下げ続けるのは疲れたんです。

必ず今夜中に戻ってきてくださいね。

ところで縄文さん、どこまで行かれるのですか?」



「帰ってきたら教えます。だって僕、まだ、どこ行くかわからないんだ。」



「縄文さ〜ん、わからないじゃ駄目でしょ!!」



「...気分のままに行動しなきゃ、お出かけの意味ないもの。

もうロボはこりごりなんだ。僕は僕の『感覚』をナビにしてお出掛けしたいの!!」



「...じゃぁ、その場所についたら必ず連絡するようにしてください。」



(あっかんべ!!のポーズを密かにしながら)



「やだ」



「...!? 縄文さん...あなたまさか、その、樹海とか華厳の滝とか...

そういった類の、いわゆるアレな場所を目指すんじゃないでしょうね?」



「...秘密。」



「え!? 縄文さん、縄文さん!! 縄文...」



ガチャリ。



僕はガミガミ電話を切り、

ハチマキ先生から頂いた「暑中お見舞いのお葉書」1枚と、

少々のお金だけを持って家を飛び出した。



湖でも海でも、どこでもよかった。

僕を包み、浅い呼吸を繰り返すこのノド冷やしてくれる、

大きな「水」に会いたかっただけなんだ。

そのついでに、さっぱりと殺してくれても構わない。

でも、出来る事ならば、僕は僕の「再生」を望む。



僕はそのまま、名前もわからない電車に乗り込んだ。

揺られること数時間、名前もわからない駅についた。



ホームは海の真上に立っていた。

どちらを見ても「海」しかない。

圧巻!!

ホームギリギリまで水が満ちている。



(満潮のときなんぞは、このホーム、海に沈んじゃうんじゃないの...?)



僕は時々ホームに上がってくる波に足を濡らしながら、

海と空の境界線をただただボーッと見つめていた。



そうだ。ハチマキ先生からのお葉書を読もう!!



僕はポケットからゴソゴソと取り出した。



誰もいないし日焼けもしたかったので、

僕はそのままホームに寝転がってみた。

大の字だ。

背中が少しだけ濡れるのが気持ちよかった。

太陽の光に透けるハガキをみて、「あぁ、僕、しっかりと夏みたいだ」と思った。



お葉書には、石川啄木の歌が書いてあった。



「こころよく 我に働く仕事あれ それを仕遂げて 死なんとぞ思う」



「縄文君へ 

君のご活躍を見ては嬉しく、元気づけられております。

お元気で、一度限りの人生を!!」



(ハチマキ先生...

僕、本当は、弱虫なんだぁ....一度限りの人生から、逃げてきちゃったの。)



僕は誰も見ていない事を確認して、泣いた。

少しずつの涙を、長い時間流し続けた。



いつのまにか潮が満ちてきて、水が僕の顔をなでるようになった。

そのうち海は大きな波をいくつかよこして、

僕を丸ごと包み込んだ。



僕はホームから身体が浮いたのを感じた。



「何処に連れて行ってもいいよ。

僕を生かすも殺すも、君次第だ。」



「おーい、君はまだそんなことを言っているのかい?

君がこの先生きるも死ぬも、僕次第ではないよ、君次第だ。」



(だからもう、僕、どっちでもいいんだよ)

そう思いながら目を閉じた。



すると、ハチマキ先生の文字が、僕の目蓋の裏に残像となって現れた。



「こころよく 我に働く仕事あれ それを仕遂げて 死なんとぞ思う」

「縄文君...こころよく 我に働く仕事あれ それを仕遂げて 死なんとぞ思う」



「...どういう意味ですか?」

僕はその文字に語りかけた。



「どんな職業に就き、どんな目に遭おうとも、ほんとうに為すべき仕事を見出し、

成し遂げられれば、うん、死んでもいいくらい、幸せ」

チャットでもするかのように、『文字』は目蓋の裏にそう答えを示してくれた。



「あ、そうなんだ...じゃぁ僕、このまま泡になったら、

幸せじゃないのかなぁ...」



目蓋の裏の文字がまた変化した。

「きっと君は「後悔だらけの泡」となって、生きるでも死ぬでもなく、

こうして名もない海を彷徨い続けるんだろうよ。」



「怖い事言わないでよ。」



「何を今更。君は『無』になりたかったんじゃないの?

生きる事にも死ぬ事にも、興味がないのだろう?」



その瞬間、海底の底から伸びてきた手が、僕の足を掴んでググイと引っ張った。



「地球の子宮へようこそ」

目蓋の裏の文字が、そう変化した。



「永遠に、ここで過ごすがいい。何も怖いものなんてない。さぁ、おいで。」

耳の奥ではそんな声が聞こえる。

とろけるような、甘い声。

思わず力が抜けてしまう。



僕の手足は、少しずつ泡になろうとしている。

今頃になって、ようやくこの事態が心の底から怖くなってきた。



あぁ、僕はこれから「無」になってしまうのだ。



僕は声にならない声で叫んだ。



「やり残している事があるんだ!! それをやらずして、無になんてなれないよ!!」

「本当だよ、そうだった、思い出したんだ!!」

「頑張るから。僕、ほんとうに為すべき仕事、ちゃんと成し遂げるから...!!」



「泡にしないで!!」



「先生〜!! 神様〜!!」



「うえ〜ん、うえ〜ん!!」



たくさんの泡がボコボコと吹き出して...

僕は段々と消えながら、何処までも深く沈んでいってしまった。



『新宿〜、新宿〜』



...ハッと気付くと、僕は山手線に乗り、吊革を掴んでいた。



隣の人の腕時計を見ると、ガミガミ電話が決めた門限、11時ピッタリだ。



「?」



ゴソゴソとポケットのお葉書を取り出してみた。

文字が滲んでなんてかいてあるのか読めない。

そっと匂いを嗅いでみた。

間違いなく、海の香りがした。



(ハチマキ先生...)



僕は山手線で作業場に向かった。



作業場では、ガミガミ電話がまた大きな声で鳴いている事だろう。



でもね、僕はきっともう負けないよ...

少なくとも今は、負けないつもり。



「縄文君、こころよく 我に働く仕事あれ それを仕遂げて 死なんとぞ思う」




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